2025年フランス向け印刷物のミネラルオイル規制強化と対策

初種目「ブレイキン」を含む32競技329種目が実施予定のパリ2024オリンピック。

今世界でもっとも注目の集まるそんなフランスですが、2025年1月から環境を考えて印刷物に対しての規制が厳格化されようとしています。フランスへの輸出物に関わる重要な変更ですので、規制の概要と大野印刷の対策をお伝えしていきたいと思います。

目次

フランスのミネラルオイル規制とは

フランス政府は鉱物油に対する独自の規制として、2025年1月1日以降に製造・輸入される一般向け印刷物に対し、「鉱物油(ミネラルオイル)」の使用を禁止する規制を厳格化します。

この規制に関する詳細は、省令 JORF n°0102 du 3 mai 2022 に記載されており、健康有害性やリサイクル制限を引き起こすため、2023年1月1日から段階的に禁止されています。

同省令において禁止の対象となる「鉱物油」とは、「インキ製造に使用される石油系炭化水素を原料とする油脂」と明示されており、実際の禁止対象物質および濃度は以下の通りとなります。

MOAH:1~7個の芳香環を含む鉱物油芳香族炭化水素

MOSH:16~35個の炭素原子を含む鉱物油飽和炭化水素

これらの対象物質が段階的に禁止され、2025年1月1日より、

[MOAH]

インキ中の質量濃度が0.1%を超える場合、または、3~7個の芳香環を有する化合物のインキ中の質量濃度が1ppm(0.0001%)を超える場合

[MOSH]

インキ中の質量濃度が0.1%を超える場合

という厳格な基準へ変更されます。

対象となる印刷物

ここで問題となるのが、この規制の対象となる印刷物です。

今回の規制強化で気になる点として、エンドユーザーへ届く印刷物、つまり「一般向け印刷物」が対象となっている事があげられます。

製品に同梱される取扱説明書等のマニュアルが印刷物であるケースはまだ多いのではないでしょうか。

製品を輸出する上で欠かせないマニュアルが今回の規制で対象となっているため、フランスへの製品の輸出に影響が出る可能性があります。

大野印刷での対応

この問題に対し、大野印刷では各インキメーカーと調整を行い、油性インキを「意図的に鉱物油が使用されていない100%植物油由来の油性インキ」へ変更を行いました。(UVインキには元々鉱物油が意図的には使用されていません)

今回の規制では「インキ製造に使用される石油系炭化水素を原料とする油脂」が対象となっているので、インキさえ規制値をクリアしていれば問題ないことになります。しかし、今回の規制への検査方法(インキを直接検査する?完成した印刷物を溶解して検査する?等)が現状明示されていない点や、もともとの「健康有害性」や「リサイクル制限」という観点で考えると、インキ以外の原材料(紙や糊等)および、印刷物製造工程の意図しない混入(機械の潤滑油等の付着)も対象になってくる可能性が考えられます。そこで、大野印刷およびクレステックグループでは独自に印刷サンプルをSGS(検査機関)へ送り、鉱物油含有の検査を実施しました。

鉱物油含有の検査結果

上記の通り、変更前の油性インキではMOSHが多少検出されていました(それでも基準値内)が、変更後の油性インキおよびUVインキに関しては、意図しない混入も含め、全てフランスの基準値内に収まっている(検出されなかった)事を確認しました。

ただし、あくまでサンプル検査のため、この検査結果が永続的な保証を得るには不十分ですが、現時点で出来る限りの対策を行っています。

今後は、フランスへ輸出される印刷物につきましては、案件(印刷図柄)ごとにお客様と相談し、対応を行う予定です。

画像

インキ変更のデメリット

植物油由来の油性インキでの印刷は、環境にやさしい印刷ですので一見メリットばかりのように感じますが、実際にはデメリットもあります。

従来の石油由来の油性インキに比べ、インキ自体の乾きが悪いため、乾燥のための時間を長くとらなくてはならず、製造時間が以前よりも長くなってしまいます。

また、乾きが悪い=汚れが発生しやすくなるため、製本にも細心の注意を払う必要があります。

この点、乾燥に時間がかからない(すぐに硬化する)UVインキでは、これらのデメリットは解消されます。しかし、UVインキは油性よりもインキ自体の価格が高く、どうしても製品価格は高くなってしまいます。弊社ではお客様のご要望をお伺いし、インキ(印刷機)を使い分けることによって、様々なニーズに柔軟に対応することが可能ですので、お気軽にご相談ください。

今後の展開

今回のフランスのミネラルオイル規制では、あくまで、フランス政府の独自の規制となっていますが、この規制の基を辿っていくと、EUの「食品および食品と接触することを目的とした材料および成形品中のMOH(鉱物油飽和炭化水素)に関するEU勧告」が発端となっています。そのため、今後この規制がEU各国に広まっていく可能性も考えられますので、また最新の情報が入りましたら、お伝えしていきたいと思います。

お気に入りの記事をシェアしよう!

この記事の執筆者

kawashimaのアバター

kawashima大野印刷

生産管理

執筆者プロフィール

主に印刷物等の在庫管理~出荷のスケジュール管理を担当。
元々DTPオペレーターだったこともあり、アナログよりデジタルを好む。
プライバシーマーク取得時に個人情報保護推進事務局に所属していたため、
個人情報管理・機密管理にも精通している。

目次