星の数ほどある記事からこのページを選んでいただきありがとうございます。
デザイン思考に出会ってもの作りの考え方が変わった感動を皆さんと共感したいと思い記事を書きました。拙い文ですが、最後まで読んでいただけたら幸いです。
いったい星の数って・・・?
調べてみると、宇宙に存在する星の数は『6×10の23乗=600,000,000,000,000,000,000,000個』でした。東京で見える星の数、新城(私の地元の愛知県新城市)で見える星の数、松本(今の赴任地)で見える星の数って違いますよね。でも存在する星は一緒のはず。不思議ですよね(そうでもない、当たり前か・・・)。

この記事を読んだ後は、そんな当たり前が当たり前ではなく東京でも松本でも、そしてあなたのところでも同じ星の数が見えてくる。そんなことを祈りながら。
デザイン思考が生み出すものは?
うまくいけば新しい世界、そうでなくても想像もつかなかった新しいものを生み出します。
デザイン思考はスキルではなく、マインドを変える思考法です。今あるモノを分析して改良するのではなく、人が、あるいは世の中が必要なものは何かを考え一から創りだすためのものです。そう、もの中心から人中心の考えです。
人中心の考えから生まれたものは、人々の心を揺さぶり感動をもたらすものになるでしょう。
どんなときに使う?
- 新しいものを作らなくてはならない
- 企画が思いつかなく悩んでいる
- つまらないアイデアしかでてこない
- アイデアに自信がない
- 人とは違ったプレゼンをしたい
- 会社経営を刷新したい
- 新しい顧客サービスを考えている
- 何から手を付けていいかわからない
と、さまざま挙げましたが、共通するのは今までのものから変えたいと思っているときです。
変えるには真のニーズを見つけだそう
YouTubeを見て、なるほどと共感したことがありました。
自動車の誕生から130年後、まだ馬で人やものを運んでいた時代に自動車の大衆化を考えたフォード。今では当たり前の車、当時は誰もが目を輝かせ新しい時代の到来、そして天才がなせる業と思ったことでしょう。
どんな乗り物が欲しいかと聞けば、 きっと「より速い馬車が欲しい」と皆口々に答えただろう
とフォードは言ったそうです。どこよりも速い馬、または力強い馬と改良や育成を競っていた時代です。
でも、ことの本質は速くて力強い馬でなくてもいいと思いませんか。馬よりも速く力強い乗り物があればいいはずです。言葉で表現できるのは、大抵はほんの一部ですよね。人はなかなか言葉に表せないものです。言葉に表せない、それが人々の心の中に眠っている潜在意識です。
新しいものが世にでて、初めて「こんなものが欲しかった」「これを待っていた」と気が付きます。存在意識を掘り起こして形にするのが、真のニーズを見つけ出すことに繋がります。
自動車の大衆化は、存在意識を見事に形にした事例です。
新しいものを創りたいあなた、何かを変えたいと思ったあなた。
悩んで考えて絞り出せば、いくつかアイデアは浮かんでくるでしょう。はたして、そのアイデアは、あなたが思い描いているものでしょうか? 今までとは違う、人が真に求めているものでしょうか?
何が欲しいかなんてそれを見せられるまでわからない
スティーブ ジョブズ

AppleのiPod誕生にもデザイン思考の考えが
デザイン思考で商品を検索すると、だれもが知っている商品がでてきます。
その一つが、2001年に発売されたiPod。そのスタイル、シンプルな操作に驚き、それまでの音楽とのかかわり方を変えたポータブルメディアプレーヤーです。その後もシリーズ化されiPod MiniやiPod nano、iPod touchと次々とヒット商品を生み出し、20年ものあいだ人々に愛され、暮らしの中にありました。友人のなにもしない通勤時間を有意義な時間に変えたいとの発想から生まれた製品です。
次にあげられるのが任天堂のWii。今までのユーザー層を子供から家族へと変えた商品です。普通ならターゲットユーザーを誕生日にゲーム機を待ち望んでいる活発な小学校五年生の男の子(ペルソナ)として開発するでしょう。しかし、買うのは親。親はゲームばかりする子供を良く思っていない。ゲームが親子のコミュニケーションを阻害する悪。との事実から、親子で楽しめるゲーム機へと思考を変えたのです。

両者のアイデアで共通しているのは、そう「真のニーズを掘り起こした」ことです。
デザイン思考のプロセス

前置きが長くなってすみません。ここから過去に携わったマニュアル制作の経験を例にデザイン思考のプロセスを紹介します。
製品だけではなく、新しいマニュアルだって作れます。
1.共感
ユーザーが本当に必要としているものは何かを探しだすプロセス
手法
- 観察
- インタビュー、アンケート
マニュアル作成の事例
想定ユーザーだけではなく、マニュアルに関わるステークホルダー全員をターゲットにインタビューとアンケートを実施。
販売会社からは身近なユーザーの声、開発者からは製品への思いをききだし、それらの情報をマップに落とし込んで整理しました。
成果物
共感マップ(得られた情報をカテゴリー別に整理)*
*2回、3回とプロセスを回して得られた成果物も含みます。
情報のカテゴリーは、Think and Feel(考えや感じていること)、See(見ているもの)、Hear(聞いていること)、Say and Do(言っていることや行動)、Pain(ストレスや障害)、Gain (得られるものや要求)の6つに分けます。

2.問題定義
ユーザーの潜在的ニーズの仮説を立てて探しだすプロセス。
「コーヒーが飲みたい」と言っているが、本当は休憩したいじゃないの?みたいな。
手法
- マインドマップ
- ペルソナ
- カスタマージャーニーマップ
マニュアル作成の事例
共感マップからの情報をもとに、マインドマップ→ペルソナ→カスタマージャーニーマップの順で作成。
購入に至る経緯から使用、廃棄までをマップに落とし込み、ユーザーの行動を可視化しました。
成果物
マインドマップ、ペルソナシート、カスタマージャーニーマップ
失敗したことがあります。正解を出したいと焦る気持ちと不安から想い描いている理想像にしてしまいました。この時点で既成のストーリーになり、新しいものは生まれてきません。

3.創造(アイデア)
解決策は何か、幅広い視野で議論し回答を導き出すプロセス。量は質を生むという考えに立ち、自由な発想で問題解決に挑むアイデアをだすことが重要。
手法
- ブレインストーミング
- 2×2(2軸図)
- ストーリーボード
マニュアル作成の事例
ブレインストーミングではファシリテーターを立て、質より量を優先。
感じた!思った!したい!を自由に発言させ、意見はすべて書き出しボードに貼っていきます。それを元にユーザーの使用シーンをストーリー仕立てで描写しました。
次にマニュアルのコンセプトを決め、もっとも大事なマニュアルの構成を組み立てていきます。
成果物
コンセプト、ストーリーボード、マニュアルの構成(メディア(媒体)、マニュアルへの導線を含む)、紙面デザイン、アイコンやピクトグラムのデザイン
よりリアリティー感を出すためにマンガ仕立てにつくることもあります。仕事でも楽しくワクワクしないとね。

4.プロトタイプ
初めてアイデアを形にするプロセス。
作ってわかる課題も見つけ出します。苦労してきた分、思い込みもありますが、形にして初めてわかることも。
手法
- 試作品
マニュアル作成の事例
作っては、またプロセスに戻って作る、の繰り返し。
成果物
試作品
イラストより動画がわかりやすいとのことで採用しました。作ってみると「長い」「わかっているところは飛ばしたい」との意見がでて、それなら手順ごとのコマ切れ動画へと変化していきました。なるほど、レシピサイトの動画はそこなんだ!
5.テスト
体験でしか得られない価値を作り出すプロセス。
エクスペリエンスの検証工程になります。
手法
- ユーザビリティテスト
マニュアル作成の事例
第三者テスト、問題定義、創造、プロトタイプを繰り返しました。次は、製品として世にだし全世界から使用感を募ります。そして1年後、改良したものをリリース。
最終テストを市場で行うとのビッグプロジェクトでした。1年後にリリースした結果は、次の機会に。
経験から得た成功するための秘訣は
プロジェクトメンバーにデザイナーを入れることです。プロトタイプからではなく、最初のプロセスからがベストです。常に創造をしているデザイナー視点は、見えなかったものを見せてくれます。編集やDTP、テクニカルライターだけでは、既成の枠組みから抜け出せません。
もう一つは、プロトタイプの作り込み過ぎに注意します。作り込み過ぎると変更が難しくなって、そこに妥協が生まれてきます。作り込むのはポイント、ポイントで良いと思います。
もの中心から人中心へ
ものから人へと変えるのは、時間がかかります。お金もかかります。
会社やクライアントに「デザイン思考のプロセスを使って作らせてください」といっても、きっと反対されることでしょう。未知のものには慎重になるのは当然です。構成を変えるだけでもいい、先ずは小さなことから始めてください。それは、小さな成功かもしれませんが、その実績の積み重ねの中でチャンスを待ちます。必ずそのときはめぐってきます。そして、「待ってました!」と。
以前、デザイン学部の学生がデザイン思考を使ってマニュアルを創る講義に参加しました。テーマは、「こどもトリセツ」です。その名の通り子供の取り扱い説明書です。一組5人、13組のグループに分かれて、4か月かけて作ります。最後に各グループの作品発表です。
同じテーマ、時間、思考法を使って作ったものは、13通りの素晴らしいものばかりでした。その中に「トリセツアプリ」という作品があり、それはもう秀逸の一言です。対話的な構成で答えを導き出します。状況に応じた答えが用意されておりインタラクティブな体験、まさにUXと呼べるものでした。生徒たちから今まで見えていなかったものを見させてくれました。
教えに行ったのに教えられました。思いましたね、いつかこれを超えるものを創ろうと。マニュアルらしくないマニュアルを。
人の思いを考えるだけで、マニュアル作成の経験も知識もない子たちが、試行錯誤の中からひときわ輝くアイデアを導きだし、形へと変えるのです。
デザイナーのたまごたちも、今では第一線で活躍していることでしょう。
いつか、ものづくりの現場で逢えたら嬉しいですね。
満天の星が見えるようになりましたか?
「見える気がしてきた」と感じたら、もうそれは成功の第一歩と思います。