この業界に入ったときからなぜか「ノベルティ」に惹かれました。
映像制作や、イベント・展示会、Webサイトなどの主役ではなく、あくまで脇役の「ノベルティ」。ただ、「ノベルティ」は無限の可能性を秘めております。

主役を引き立てるバイプレイヤーの価値
映画やドラマの世界に目を向けると、物語を深く、そして魅力的に見せてくれるのは常に「名脇役」の存在です。どれほど素晴らしい主演俳優がいたとしても、脇を固める役者の演技が頼りなければ、作品全体のクオリティは引き締まりません。主演の魅力を最大限に引き立て、作品の世界観に圧倒的な厚みをもたらす彼らのように、ノベルティもまた企業やブランドのプロモーションにおいて欠かせない役割を果たしています。メインとなる華やかな映像制作や大型展示会、大規模なWebサイトの構築が「主役」であるならば、ノベルティはその世界観を現実世界へと補完し、顧客の記憶に長く定着させるための優秀なバイプレイヤー(脇役)と言えるでしょう。
しかし、この名脇役の真髄は、決して主役を食ってしまわない「でしゃばりすぎないこと」にあります。どれほど個性的で魅力的な脇役であっても、主役の出番を奪ってしまっては本末転倒です。優れたノベルティには、日々の生活にそっと馴染む実用性や、思わず手元に置いておきたくなる洗練されたデザインが絶妙なバランスで備わっています。押し付けがましい全面的な広告ではなく、日常の風景に自然と溶け込むからこそ、受け取る側も心理的な抵抗なくそれを受け入れ、生活の一部として愛着を持って使い続けることができるのです。そこには、言葉以上に雄弁な、企業から顧客への細やかな気配りと、ブランドの姿勢が静かに込められています。
日常に溶け込み、時を超えて価値を伝えるメッセージ
現代社会において、モノや情報が溢れかえる中、ノベルティのあり方も時代とともに少しずつ変化してきました。かつての「ただ配るだけの安価な販促品」や「使い捨ての粗品」といったイメージは過去のものです。現在のノベルティは、環境に配慮したサステナブルな素材選びや、ライフスタイルに寄り添った高い機能性、あるいは思わずSNSで誰かに見せたくなるような高いデザイン性とクオリティへと大きな進化を遂げています。それはつまり、企業が顧客の日常に対して「どんな形で寄り添いたいか」「どのような価値を提供したいか」という、目に見えないメッセージそのものの表れでもあるのです。
名脇役であるノベルティが持つ力は、決して派手でもなければ、瞬発的な爆発力があるわけでもありません。しかし、無機質な企業ロゴが、日常的に使うお気に入りのマグカップやトートバッグにプリントされているだけで、不思議と心理的な距離が縮まり、親近感が湧いてくるものです。テレビCMやWeb広告は画面を閉じれば見えなくなりますが、物理的な形を持ったノベルティは、ユーザーのデスクの上や鞄の中に残り続けます。そのささやかな愛着が日常の中で何度も積み重なることで、顧客はいつしかそのブランドのファンになり、一過性の認知を超えた良質なコミュニケーションと深いエンゲージメントが生まれていくのです。
心を動かす「配役」の妙とプロデューサーの視点
だからこそ、ノベルティの選定や企画には、単なる物作りの知識を超えた、プロデューサーとしての審美眼と緻密なマーケティング戦略が求められます。ただ単にトレンドのアイテムや予算に見合った既製品を選ぶだけでは、人の心を動かす名脇役にはなり得ません。そのクライアントが抱える課題は何か、届けたいブランド価値はどこにあるのか、そして何よりも、それを受け取るターゲットの生活にどう寄り添えるのかを徹底的に見極める必要があります。
ターゲットの年齢層、職業、ライフスタイル、そしてノベルティを手にする瞬間のシチュエーションまでをリアルに想像し、最適な「形」へと落とし込んでいくプロセス。主役であるメインプロモーションを引き立てながら、自身の役割を完璧に全うするノベルティは、時に数千万円をかけた広告以上に、一人の人間の心を深く、そして永続的に動かす力を持っています。その一見小さく見えるアイテムに無限の可能性を吹き込むことこそが、この仕事の醍醐味であり、他には代えがたい面白さなのです。
いつのころからか、ノベルティ案件が発生すると相談されることが多くなり、社内で「ノベルティ王」としてのポジションを確立いたしました。10年前には、周年記念品として企業キャラクターのスマートフォンスタンドを制作したのですが、そのスマホスタンドを見て弊社に興味を持ち、実際に入社して社員になったのは「ノベルティ王」としての誇りでもあります。
「ノベルティ」という名脇役を、どのクライアントに、どんな用途で提案するか、その配役を考えているときが、プロデューサーとしての楽しみのひとつです。

