モーターサイクル乗ってますか?
コロナの流行により人の過密状態を避けるため、レジャーの一つとしてモーターサイクルの需要が増えましたが、皆さんは現在モーターサイクルに乗っている、もしくは乗っていた経験がありますか?
私は過去に乗っていたのですが、今現在は20年ブランクのペーパーライダーです・・・。
今回は私の仕事の一つであるモーターサイクルの取扱説明書作成で得た知識を基に、モーターサイクルの運転支援機能について少しお話をさせていただきます。
モーターサイクルの運転支援機能にはどんなものがある?
現在のモーターサイクルの運転支援機能は、安全性を目的とする機能と利便性を目的とする機能の大きく2つに分けられます。
現在の主流な機能としては、下記のようなものがあります。
*詳しい機能や名称はモーターサイクルメーカーごとで異なる場合があります。
安全性を主目的とした機能
- ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)
ブレーキング時にタイヤがロックするのを防ぎ、滑りやすい路面でも安定した制動力を維持します。これにより、ブレーキングの際にコントロールを失うリスクが減少します。 - トラクションコントロールシステム
タイヤがスリップするのを防ぐシステムで、特に滑りやすい路面や加速時に役立ちます。これにより、特に高出力のモーターサイクルで安全に加速できるようになります。 - スリッパークラッチ
急なシフトダウン時にエンジンブレーキによる後輪のロックを防ぎます。特にスポーツタイプやツーリングタイプのモーターサイクルに搭載されています。
利便性を主目的とした機能
- クルーズコントロール
高速道路などで車速を一定に保つシステムで、ライダーがアクセルを操作しなくても定速走行が可能になり、長時間のライディングを快適にし、疲労を軽減します。 - ヒルスタートアシスト
坂道での発進時に、ブレーキを踏んでいる間に自動的に車両を停止状態に保ち、アクセルを開けると自動で車両を前進させます。坂道での発進時に後退を防ぎます。 - シフトアシスト(クイックシフター)
ギアチェンジ時にクラッチ操作を不要にし、シフトアップやシフトダウンをスムーズに行うことができます。 - ドライブモードセレクト
異なる走行モードを選択することができ、エンジンの出力特性やトラクションコントロール、ABSなどを調整できます。ライダーの好みに合わせて特性を設定できたり、安定した走行が可能になります。 - スマートフォン連携機能
スマートフォンと連携することで、走行データの確認やナビゲーション機能の使用、通話、さらにはモーターサイクルの診断情報をモニタリングすることができます。 - 電子制御サスペンション
路面の状況に応じて、サスペンションの設定をライダーがボタンやメーター画面で調整できます。
下記のように、搭載義務化の流れも出てきています。
モーターサイクルはブレーキ時のリスクが高いために、特にブレーキに関わる機能であるABSについては国としても義務化に動いています。
- 2018年10月1日以降に日本国内で販売される二輪自動車(排気量125cc超)の新車(新モデルのみ)はABS搭載が義務化されている。
- 2021年10月1日以降に日本国内で販売される二輪自動車(排気量125cc超)の継続生産車、型式指定を受けていない輸入車などはABS搭載が義務化されている。
モーターサイクルの運転支援機能のメリットは?
運転支援機能が搭載されたモーターサイクルに乗ると、下記のようなメリットがあります。
- 事故の軽減
ライダー、歩行者のみならず事故の軽減により医療関係、保険関係など社会全体の負荷が減ります。 - 運転が苦手なライダーの支援
坂道の発進、高い速度からの急な停止、ギアチェンジなどライダーの苦手としている運転をサポートします。 - 疲労や誤操作の軽減
モーターサイクルのシステムが介入することでヒューマンエラーを減らし、ライダーの疲労も軽減させます。
モーターサイクルの運転支援機能のデメリットは?
もちろんメリットだけでなく下記のようなデメリットもあります。
- 名称の複雑化
同じ機能でもメーカーごとに名称が違っており、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)のように共通用語化されていないものが多々あります。 - 修理代金の高騰
センサーやシステム部分が故障すると、運転支援機能無しのモーターサイクルに比べて修理代金が高くなる傾向があります。 - 運転支援機能の誤作動
レーダー/センサーが誤作動して想定される状況以外で作動してしまうことがあります。
これらのデメリットは運転支援機能の普及率や技術改善で解消されるものもありますので、今後のメーカーの企業努力に期待しましょう。
唐突ではありますが、テクニカルライター視点で一言申し上げさせてください!
私もモーターサイクルの運転支援システムについては賛成です。
ただし、運転支援機能の取扱説明書作成には下記のような苦労があることも少し知っていただけると幸いです・・・。
- 実際に走行して状況を再現することが出来ないため、説明内容の確認や裏取りが難しい
- 電子制御系の設計変更が頻繁にかかるので、変更の追従が大変
- 開発図面を読み解くための時間がかかる
モーターサイクルの未来
モーターサイクルは今後どのように進化していくのでしょうか?
自動車と同じ方向への進化(自動化・電動化・インテリジェント化)だと言われています。
例えば、部品メーカーのボッシュではモーターサイクルを運転するライダーの死角にいる車両検知・前を走行する車に近づくとメーター画面に警告し最終的にはブレーキを自動でかける機能などを開発し、KTM、ドゥカティ、カワサキで採用され始めています。
自動車の運転支援機能を応用してモーターサイクルに搭載できるようにした流れですね。
電動化に関しては各メーカーは試行錯誤しながらも、少しずつですが電動モーターサイクルを販売するところまで進んでいます。スクーター形状の製品が主流ですが、ハーレーやカワサキはモーターサイクル形状(いわゆる皆さんがご想像する跨って馬に乗るような状態で走行する形状)の製品もリリースしています。
モーターサイクルの場合は、自動車と違い車体スペースの制約が大きいため安全性を確保しつつバッテリー搭載位置、容量、デザインを工夫しなければならないので苦労は大変なものだと思います。
インテリジェント化としては、ホンダやヤマハが自立するモーターサイクルを披露したり、ヤマハはモーターサイクルを運転するロボットを披露しています。
倒れないモーターサイクルや自動運転してくれるモーターサイクルも現実味を帯びてきました。
終わりに
モーターサイクルは風を感じて運転する楽しさがある一方で、体が外にさらされている事で事故になると自動車よりも怪我のリスクが大きい乗り物です。
ライダーのためにも運転する楽しさを残しつつ、さらなる安全性と利便性を確保した運転支援機能の進化に期待したいですね。
弊社ではモーターサイクルを含んだ、様々な輸送機器のマニュアルを制作させていただいております。
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